寝台特急さんのレビュー・感想

会話を哲学する
著者: 三木那由他
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寝台特急

まずこの本に出会えて良かったと素直にそう思った。良かったと感じた点は3つある。
1つ目は、過去に他人とのコミュニケーションで感じたモヤモヤの正体を知ることができたこと。
2つ目は、独り言などの一見無意味に見える行動にもロジックが存在すること。
3つ目は、この本の知識を頭に入れた状態で小説・漫画や映画などのフィクションの世界に触れることで見える景色が変わると思えたこと。

■モヤモヤの正体が知れてよかったことについて

SNS上で発生するいわゆる炎上という現象や、差別的な発言を見たときに「一見発言者は真っ当なことを言ってるように見えるが、攻撃的で確実な悪意を持っていることを感じる。しかしそれを指摘することができない」という心理状態になることが多々あった。ようは「この人絶対に攻撃する目的で発言してるけど、それを批判されないような言い方でごまかしてる」といった感覚を覚える場面が多かった。
この本を読んだあとに、それは何故か?ということとそういう場面に出くわしたときに次回からどうしたら良いか?という解を自分の中で見出すことができた。これは非常に大きい発見だった。

詳しくは本の魅力を削いでしまうため書けないが、端的に言うと「人のコミュニケーションで起こってる理不尽の正体」が何かをこれを読むことで理解することができるようになる。
・・・と書くと物騒に聞こえるが、この本は別にそういったコミュニケーションの指南書ではない。フィクションの世界でかわされる会話に置いて、どういったコミュニケーションが起こっているかを解説してくれている。

表紙の帯に書かれている「好きだ」と言わないことで何を伝えているのか?
といった紹介文はまさにそのことで、この本は「人は会話においてどういった認識を形成しているか」を丁寧に解説してくれている。その内容に触れることで、応用して様々な会話場面においての意味合いを自分に置き換えて推し量れるような知識が身につく。

さらに読み進めることで、
■独り言を言うことで自分は何をしようとしているのか
も段階的に理解が進むようになる。

人間が避けては通れない会話という行為にどういった側面が潜んでいて、私達が知らず知らずのうちに何を行おうとしているか。それがわかってくると、今度は
■フィクションの世界における会話の側面で何が行われているか
を知りたいという欲が生まれ、小説や漫画を読み進めるのが楽しくなってくるのを感じた。

長くなったが、総じて「会話とは何か?何をしようとしているか?」を体系的に学ぶことができ、また題材となっているものがフィクションの作品なので、楽しみながら読み進めることができる。気づくとどんどんページを捲っていて、あっという間に読み終えることができた。

この本に出会えて良かった。

読了日: 2024-02-21
レビュー投稿日時: 2024-03-06 23:49:13